李逵?
 
 8月29日(日)/6日目
 
 竜虎山にいたときのこと。
 この日は、例の「百八星が逃げた穴」を(侵入して)撮影した日だったが、その他にいくつかの観光地を回った。その中で、ちょっとどころではない変なモノを見てしまった。
 
 竜虎山で仲良くなった子供・舒志剛に連れられて、あちこちを回っているうち、彼の伯母さんらしい人物に出会った。するとその伯母さんが、洞窟のようなところにわれわれを案内した。そして洞窟に据え付けられた門を開け、中へ入れと言う。
 その日はかなり暑かったのだが、洞窟の中は不気味なくらいひんやりしている。
 伯母さんは、自分の後ろをついてきて、何やらスイッチを押している。すると、真っ暗だった洞窟に青白いライトが点き、道教的なBGMと、怪しげなモーター音が聞こえてきた。
 
 ここは、洞窟内に作られた祠だったようだ。左側にズラリと神像が並び、ぎこちなく動いている。首が回ったり口が開いたりする、アグレッシヴな神さまたちだ。
 伯母さんは、一つ一つにお賽銭をあげるように言うのだが、細かいお金はすぐになくなってしまった。すると、「じゃあ、大きい額で払いなさい」と言う。払わねぇっての。
 
 で、神像とはいったものの、造りはかなりいいかげんである。名前は書いてないので、いちいち志剛に聞いていたが、途中でどうでもよくなった。
 だがその中に、ものすごいモノがあった。普通の美男(?)のマネキンが、顔に墨を塗り、チャイナ帽をかぶり、両手に斧を持っている。モーターの力でカクカク動きながら、その斧を(わずかに)振っているのだ。
 
 荘厳な洞窟内で、自分は爆笑した。止まらなかった。他に客がいなかったのは幸いだった。笑いながら、志剛に(一応)訊いた。
「これ…李逵か?」
「そうだよ。リー・クイだ!」
「神さまなんだね?」
「そうだよ」
「そ、そうか(笑)…(神じゃねぇ…これはギャグだ!)」
 
 この、もはや神をも超越した李逵様を、どうしても写真に撮りたかったのだが、残念ながら伯母さんは承知してくれなかった。
 中国では、寺院や神仏の撮影は自由なところが多い。つまり、この不許可の理由は
「恥ずかしいから写真はやめてください」
 という意味にちがいない。だって、他に何がある?
 
で、記憶をたどって絵にしてみた。
 
 
TAKE ME TO BACK