実践・二泊三日で水滸城!

 

一日目 2005年 10月 22日(土曜日)

 中国の無錫に、その名も水滸城という場所がある。中国のTVドラマ「水滸伝」の為に作られた撮影所だが、観光地として一般にも公開されている。

今回の目的地・無錫の水滸城

 

 自分も2000年の9月に訪れたが、無錫というところは上海から結構近い。だから唐突に企画を考えてみた。
「二泊三日で水滸城だけを遊ぶ」
 一人では盛り上がりに欠けるので、今回は「水滸伝―水のほとりの物語」の笠原さんと、「水滸聚義」のよんたいさんに同行をお願いした。お二人には、相変わらずおバカな企画を考える私に付き合っていただいてとても感謝しています。

 まずは成田空港から上海へ。航空会社は毎度お世話になってる中国東方航空。よんたいさんとは無錫で現地合流するという荒技セッティングなので、この機内では笠原さんと二人。

 上海へ着いた頃には、辺りはもう暗くなっていた。タクシーで飛ばして上海市街、そしてホテルへ直行。
フロントに入ると、いきなり小姐(女子職員)に「満室です」と断られた。
いつも私は飛び入りで宿を取るので、これは以外な展開だった。が、今回は笠原さんも誘っているので、ホテルは全て事前にインターネット予約を済ませておいた。危ない危ない……



 

上海のYMCAホテル・青年会賓館の外観(10秒,mpg,840KB)

YMCA(Young Men's Christian Association)は1844年ロンドンで誕生して以来、全世界に広まり、 現在では世界122の国と地域に組織された国際的青少年団体です。(以上コピペ)



 部屋に入り、昨日のうちに無錫に入っているよんたいさんに連絡を取る。彼の宿泊先のホテルに電話を入れたが、情報管理がいいかげんで、「そんな人は泊まっていない。そもそも日本人客などいない」などと言われて大わらわ。さんざん電話をかけ直した結果、彼はちゃんとそのホテルに泊まっている事が確認でき、一安心。

 その後笠原さんと外出し、明日の列車の切符を買ったり、夕食を食べたりした。




街の食堂で。ご飯、鶏肉、豆苗、餃子 &青島ビール

今日の出費

水:6元
タクシー:135元
ホテル代:442.8元
無錫までの切符:31元(一人分)
夕食:二人で33元
青島ビール×2:14元
煙草(紅梅):4.2元
棗(250g):12元
ビジネスセンター使用料:7.5元



二日目 2005年 10月 23日(日曜日)

 初日はだいぶ疲れているのに、乗る列車が早いため今日は朝の4:30に起床。いつの事だが、のんびりした旅行になどならない。
上海駅に着いて列車に乗り込む。とても空いていたのでめいめい好きな場所に座り、無錫まで列車の旅を楽しんだ。

 7:30に無錫に着く。まだ寒い中、町中をうろついてタクシーを探す。
 今日の宿は「物産大酒店」。ホテルの名前っぽくないけど、中国では「飯店」も「酒店」もホテルや食堂の名前として使われている。
 タクシーに乗って物産大酒店へ到着すると、フロントでよんたいさんが待っていた。ようやくメンバーが集結した。早速我々二名の追加チェックインをする。

エクストラベッドを追加しているところ (10秒,mpg,858KB



 一休みして、いよいよ今回の目的地、水滸城へ。
 私としては、活気あふれる観光地となったこの場所で、人波をかいくぐり、水滸伝アトラクションの数々をビデオカメラに収める事だけで頭がいっぱいだった。

 中に入ると、おお、早速やっている! カメラカメラ! ……ああ、ちょっとしか撮れなかった。
 まあいいや、そのうちどこかでアトラクションが始まるだろう……

 と思って辺りを歩いたが、表演題目のリストがどこにも見あたらない。これじゃ、何時にどこでどの好漢のアトラクションがあるのか、さっぱり分からない。

 それに何だか寂れていて、お客さんも全然いない。スタッフも活気がなくて、我々はただ撮影に使われる建物を見て回るだけになってしまった。確かに、ドラマで使われた場所なのでそれなりに見ていて面白くはあるが……以前に来た時と比べると、水滸伝に対する熱意がかなりダウンしているようだった。

 水滸伝ではないけれど、オリジナルの武侠アクションを演じていた。ワイヤーや爆薬を使って派手な演出! でもお客さんは失笑するばかり。うーん、役者さんはがんばっているんだけどな。

話の趣旨は全く分かりません (16秒,mpg,1.3MB)


 入り口すぐにあるセット、「紫石街」(武松が武大と再会する場所)では、役者兼物売りの人たちがダベっていた。近付いていくと、楊志の人もいる。五年前と同じ役者さんだったので嬉しくなり、さっそく話しかけた。
 

 

楊志「いらっしゃい。どこから来たの?」
自分「日本です。僕たち、五年前にも来た事があるんですよ」
楊志「おお、日本人か! じゃあこのお土産を買っていってくれ!」

……まぁやっぱり憶えてなどいないわな。楊志のヒゲが付け&描きヒゲになっていたのもちょっと哀しい。以前は自前ヒゲだったのに。武大饅頭も焼きたてではなかったのであまりおいしくない。

 あちこちにあるセットは、撮影の便宜のため看板のたぐいがほとんど外されたり変えられたり、なので「ここは潯陽楼だったなぁ」とか、記憶に頼って尋ねるしかなかった。
 丘を登って忠義堂へもいってみたが、替天行道の旗も外され、何とも寂しい。

 樹脂製の好漢人形を発見。百八体全部ある、というので、在庫の入った段ボールからいくつかをチョイスしようとしたら、店頭に出ているものはバラ売りするが、在庫からはできない。買うなら百八体全部買え、と言われた。仕方なく轟天雷凌振の人形だけを買う事に。どの好漢にも粋な小道具が付いていて面白いが、顔がいまいち。

 

左側の「版権所有」の文字がなんかムカつく

 

 昼食の後、軽い気持ちでとなりの三国城まで歩いた。
 土地は水滸城より狭いので、より人も少ないだろうと思っていたら……いやいや、人でごった返している。

特に蜀のスペースは大人気。石像も一番数が多い

 

 団体客も学生も家族連れもいて、とにかく大にぎわい。水滸城の閑散ぶりとの違いに、目が点になった。
 お客さんの皆が皆三国志ファンではないが、観光にかなり力を入れている。正直、自分も写真やビデオはこちらの方が多く撮った。

 

古代の楽器を使った演奏ショー (14秒,mpg,1.1MB)

 

 馬を使った大アトラクションが大人気 (25秒,mpg,2.2MB)

 

お、見つけました、水滸城のアトラクションのメニュー。なぜか三国城にだけ貼り出されている。

ちゃんと水滸城にも貼れよこんちくしょう。

 

 

↑9:00の次が15:00って何だ…… 並びがバラバラなので見やすくまとめると↓

時間 演目内容 場所
9:15 楊志刀を売る 紫石街
10:00 酔って蒋門神を打つ 清明上河街虹橋
11:00 オリジナルアトラクション(非水滸) 特撮広場
13:30 兄弟相見える 紫石街
14:00 オリジナルアトラクション(非水滸) 特撮広場
15:00 燕青擂台(リング)に立つ 大相国寺のそば
16:00 楊志刀を売る 紫石街

 

  観客が多い分、スタッフも多く、全体の演出に努力と工夫が見られ、とても楽しかった。その分、水滸城の脱力さが残念でならなかった。人を誘ってまた水滸城に来ようという企画だったが、一番肝腎なところでNGになってしまったのだ。

 我々は三国城を出てタクシーでホテルへ帰った。
 ワンタンのおいしいお店で夕食をした後、CDショップや本屋を見て戻る。
 部屋に戻り、水滸城で買った白酒を飲んでみたが、匂いのキツさに圧倒されてリタイア。
 疲れも来ていて、あとはだらだらTVを見ながら休んだ。

 

ちょっとだけ見られた「楊志、刀を売る」のアトラクション (11秒,mpg,0.9MB)


今日の出費

タクシー:割り勘で計45元
水:1.8元
ポテトチップス:11元
無錫の地図:4元
 水滸・三国・唐城の一括入場券:90元
武大まんじゅう:1元
孫二娘包子:1元
凌振の人形:値切って10元
昼食:25元
白酒:10元
ミカン:4元
夕食(ワンタン3品):16元  水滸伝DVD(Macのみ対応で見られなかった):25元


三日目 2005年 10月 24日(月曜日)

 最終日。予定では列車は午前8時25分に出る。
 6時45分頃に起き出し、早めに身支度。いらないものはどんどん捨てた。旅行の度に、着古したシャツを捨てていくんです。
 7時には部屋を出て、チェックアウトをする。が、ホテルマンが予想どおりに要領が悪く、かなり時間をかけてチェックアウト。

 無錫の駅から列車に乗り、一時間半ほどで上海に到着。午前10時、あいかわらず駅前は人が多い。どんな季節もどんな時間でも変化しないような不思議な光景だ。日本では終電が行くと駅が閉鎖するが、中国では24時間駅が開いて列車が走っているからである。線路の整備っていつやるんだ?

 タクシーに乗って豫園へ向かう。豫園の中には入らないが、ここの周りには工芸品などの店がひしめいていて土産を選ぶのに事欠かない。

 

豫園

 

 笠原さんが印鑑を買う事になった。お店の小姐が高い石を出してふっかけてくる。相場はよく分からないが、ずいぶん高くされている事は確かだ。始めは380元の石を出してきたので「高すぎる」というと、小姐はにっこり笑って我々を奥へ呼び、480元の石を持って来た。ふむ、値切り交渉する意志があると見て、わざと良いものを見せて来たな。一度大きく前に出て、後退しながら敵を斬るという戦法のようだ。それならこちらも受けて立ってやろう(人の買い物だけど)。

 小姐が「これはいい石、480元だけど、いくらならよろしいですか?」といって電卓を差し出す。笠原さんは「100,Please.」と英語で応じるが、向こうは聞いているのかいないのか。代わりに自分が電卓に打つ。「80」。勝手に二桁代に落としてみた。さすがに小姐は渋柿をかじったような顔で「それはひどい」と拒否する。分かっている、これはジャブだ。小姐は次に電卓に「200」と打ち出した。いきなり半値以下に下がる。これは売る気満々だ。同時に、原価が相当安い事の証明でもある。この値段は、文字数指定なしで彫り代込みだというのに。慣れていない日本人観光客ならここで落とすところだろう。この小姐はかなり場数を踏んでいるぞ。

 笠原さんもこの下落には驚いたが、さすがにすぐには手を打たない。その意を得て、今度は「150」と打つ。小姐はすかさず「180」と打ってきたので、「これ以上は出せない」という顔をすると、小姐は「わかりました」とOKを出した。かなり負けさせたような感じはするが、底値よりはまだまだ上だったのだろう。

 考えてみれば欧米人の観光客には印鑑など記念品にしかならないが、日本人には実用性の高い日常品であるし、国内で作れば安くない上に日数もかかる。だからたまに日本人客からがばっとぼったくれれば商売が成り立つのだろう。実際に文字もきれいに彫られていて、立派な印鑑ができていた。

 その後小腹が空いたので包子を見つけて買う。これはなかなか旨かったので、旅の目的の一つも果たせた。
 それから自分は卓上カレンダーを大量に買い込んだ。職場の人への土産である。あまりにも重くなったので空港から空輸にしたが、中国のカレンダーなので日本とは祝祭日が違うという事実に気が付いたのは成田に戻ってからだった。

 時刻は12時半を周り、ここでよんたいさんとはお別れしてタクシーに乗り龍陽路駅を目指す。ここは上海国際空港へと直結する、中国ご自慢のリニアモーターカーが走っている駅である。市街地からは遠く、まだ人々の足としては力不足だが、今後は距離を伸ばしていく予定だという。広い中国には便利な乗り物になるだろう。

 我々二人はチケットを買い、いそいそと乗り込んで発車を待った。一旦浮き上がってから始動するのかと思っていたが、ずっと浮いてるものなのね。いきなり動き出してびっくりしたが、音や振動は車輪のある列車とさほど変わった感じはしなかった。むしろ車輪があるんじゃないかと疑いたくなるくらい。しかし磁浮車(リニアモーターカーの中国語名)は瞬く間に速度を上げ、景色をばんばん後ろに飛ばし、とうとう音速を越えた。かなり揺れが強くなったものの、そのまま速度を維持して空港へと走り続けた。やがて少しずつ速度を落とし、空港へと到着する。乗車時間はわずか八分であった。タクシーで空港まで行くには一時間を要するので、短縮なんてもんじゃないくらい早かった。

ホームと車体

 

超音速・リニアモーターカー (17秒,mpg,1.4MB) 

 

 空港にてチェックインをすませ、喫茶店でくつろぎつつ水滸伝の話などをして時間を潰す。
 そろそろいいだろうと手続きに行くと、厳しい(とろくさい)検査のために長蛇の列ができていた。離陸の時刻が迫って来たが、なかなか番が回らず、ようやく通った頃にアナウンスがかかり、我々が名指しで呼び出されてしまった。こっちは余裕を持って行ったつもりだったんだけどね。
 我々二人だけで空港のバスに乗せられ、滑走路近くまで送られる。いやあ飛行機を遅らせてしまったのは初めてだ。タラップに着くとスッチーが恭しくお辞儀をして迎えてくれた。なんだかVIPみたいな搭乗風景だが、実際は単なる遅刻者である。そそくさとエコノミー座席に入っていきました。

(完)

 

今日の出費

 菓子:14元
 スポーツ飲料:5元
 ホテル代:83元
 タクシー:計10元
 肉まん:1元
 お土産用カレンダー:値切って50元
 リニアモーターカー(磁浮車):40元
 昼食:12元
 お土産郵送費:229.7元(土産代の五倍を越えてる)

 

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