だい19かい こくせんぷうのリキ
 
 さてソウコウは、こうしゅうのろうやにいれられましたが、ソウコウは、ろうやのみんなに、しんせつにしてあげたので、みんなから、めをかけてもらえました。
 
 ろうやくにんのなかに、タイソウというひとがいて、このひとは、りょうざんぱくのゴヨウとなかよしでした。ソウコウとも、すぐになかよくなって、ふたりは、いっしょにおさけをのみにでかけました。
 
 ところが、ふたりがたのしくはなしをしていると、みせのひとが、タイソウをよびにやってきました。
「タイソウさん、また、あのひとがあばれています。なんとかしてくださいよ」
「まったく、しょうのないやつだ。ソウコウさん、ちょっとまっていてください」
 そういって、タイソウは、したからひとりのおとこをつれてきました。いろのくろい、おおきなおとこです。タイソウがいいました。
「こいつは、リキといって、わたしのところではたらいているものです。あばれもので、てがつけられないので、こくせんぷうとよばれています」
 するとリキが、ソウコウをみて、ききました。
「タイソウのあにき、こいつはだれだよ」
「よくきけリキ、このかたこそ、おまえがあいたがっていた、ソウコウさんだよ」
 それをきくなり、リキはおおよろこびしました。リキも、ソウコウのなをしたっていて、あいたいとおもっていたのです。
 
 三人は、つれだってあるき、かわのながめがきれいなおみせで、おさけをのみました。
 ところが、せっかくおいしいおさけをのんでいるのに、いきのいいさかながありません。
「よし、おれがちょっといって、いいさかなをもらってこよう」
 リキは、そういって、ぱっとかけだしていきました。
 
 リキは、りょうしたちがあつまる、川ぶちにやってきて、いいました。
「おい、いそいでるんだ。すこし、さかなをいただいていくぜ」
 そういうがはやいか、リキは、さかなをつかまえてあるいけすのふたを、かたはしからあけてしまいました。これでは、さかながどんどんにげてしまいます。
「このやろう、なにしやがる!」
 りょうしたちは、リキをとめようとうちかかり、おおさわぎになってしまいました。
 
 すると、りょうしたちのおやかたが、むこうのほうからあらわれました。
 そして、リキをみて、いいました。
「こいつ、おれたちのしょうばいを、じゃまするのか。おれがあいてになってやる!」
 そういって、おやかたはリキにむかっていきましたが、リキのちからにはかまいません。おやかたも、リキになぐられてしまいました。
 そのとき、うしろのほうから、ソウコウとタイソウがやってきて、リキをとめました。
「やめろ、どこまであばれりゃ、きがすむんだ!」
 というタイソウのこえをきいて、ようやくリキはおとなしくなりました。
 
 そして、三人がつれだってかえろうとすると、うしろから、あのおやかたが、さけびました。
「やい、まだしょうぶはおわっちゃいねぇぞ。おとこなら、ここまできてみやがれ」
 よくみると、おやかたは、ふねのうえにたっています。
「このやろう、まだなぐられたいみたいだな」
 リキは、そういうと、だっとかけだして、ふねのうえにとびこみました。ソウコウたちがとめるまも、ありません。
 
 リキがふねにのったのをみて、おやかたがいいました。
「こんどは、さっきのようにはいかないぜ」
 と、おやかたはふねをはげしくゆすり、どうじに、リキのうでをつかまえたので、二人は、そのまま川の中へおちてしまいました。
 
 おやかたは、じつは、およぎのたつじんでした。リキは、おやかたに水の中でおさえつけられ、いきができません。きしでみていたりょうしたちが、おもしろがってさわぎだしました。
 みかねたタイソウが、おやかたにむかって、さけびました。
「チョウジュンさん、そろそろリキをかんべんしてやってくれよ」
 そういわれて、おやかたは、リキをひっぱって川からあがってきました。
 
 タイソウが、おやかたにあやまり、わけをはなしました。すると、おやかたは、となりにいるのがソウコウとしって、あわてていいました。
「わたしは、チョウオウのおとうとで、チョウジュンといいます。さかながほしいんでしたら、そういってくれたらよかったのに」
 
 こうして、リキとチョウジュンはなかなおりをし、四人はいっしょに、たのしくはなしをしました。
 
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