だい13かい ソウコウのおよめさん
 
 さて、チョウガイたちをにがした、あのソウコウのおはなしです。
 ソウコウは、ついさいきん、およめさんをもらいました。とてもかわいらしく、うたもうまい、バシャクというむすめで、としも18さいです。ちなみにソウコウは30をこえています。
 じつは、バシャクのおかあさんが、ソウコウがやさしくてめんどうみがよいのにめをつけ、うまいことをいって、かたちだけのふうふにしてしまったのです。
 じっさいには、ふたりのなかは、よくありませんでした。バシャクは、じぶんかってでよくばりでしたし、ほかにすきなひとがいました。さらに、ソウコウも、もともとけっこんをするきなど、なかったからです。
 
 あるひ、ソウコウのもとに、ひとりのおとこがやってきました。よくみてみると、なんと、りょうざんぱくにいるはずの、リュウトウではありませんか。ソウコウは、あわてました。
「おいおい、あんたはおたずねものだぞ。どうして、こんなところにいるんだ」
 すると、リュウトウはいいました。
「チョウガイどのが、あなたに、ぜひおれいをしたいといって、わたしをこさせたのです。われわれが、りょうざんぱくににげることができたのは、すべてあなたのおかげです。さあ、これをうけとってください」
 そういって、てがみと、ひゃくりょうのきんをだしました。ソウコウは、てがみをよみ、それをしまうと、きんをひとつだけうけとって、のこりをかえしました。リュウトウは、ぜんぶうけとってほしいといいましたが、ソウコウはうけとりませんでした。やがて、リュウトウは、りょうざんぱくへかえっていきました。
 
 ソウコウは、リュウトウとわかれてかえるとちゅう、バシャクのおかあさんにあってしまいました。バシャクのおかあさんは、
「さいきん、むすめにあってくれてないそうじゃないですか。こんやはぜひ、うちへきてくださいな」
 といって、いやがるソウコウを、むりやりつれていきました。
 
 さて、ソウコウは、しかたなくそのひはバシャクのところでねましたが、よくあさすぐに、でていきました。しかしそのとき、うっかり、チョウガイのてがみをわすれてきてしまったのです。
 そのてがみは、バシャクにみつけられていました。バシャクは、こうおもいました。
(ソウコウのやつ、あのチョウガイとなかがよかったんだ。チョウガイをにがしたことがばれたら、あいつもおしまいだわ。よし、このてがみをつかって、ソウコウをおどして、おかねをまきあげてやるわ)
 
 あわててもどってきたソウコウは、バシャクにききました。
「おい、わたしのしょるいぶくろをしらないか」
 けれども、バシャクは、とぼけています。
「なあに、しらないわ」
 ソウコウは、ますますあわてます。
「なあ、いじわるしないで、かえしてくれないか。そのふとんのなかに、あるんだろう」
 バシャクは、こんどはこういいます。
「かえしてもいいけど、あんたがチョウガイからもらったひゃくりょうのきんを、ぜんぶあたしにくれるかしら?」
 ひゃくりょうのきんときいて、ソウコウは、こまっていいました。
「あのおかねは、すこししか、うけとらなかったんだ。ひゃくりょうほしいなら、いえのものをうって、おかねにかえてあげるから、そのてがみをかえしてくれ」
「いやよ、あたしは、いまほしいのよ。でなければ、おやくしょに、あんたがチョウガイをにがしたこと、ばらしちゃうから」
 あまりにもバシャクがむりをいうので、さすがのソウコウも、キレてしまいました。
「いいかげんにしろ、こいつ!」
 おこってふとんをひっぱったはずみに、ソウコウのかたながおちてきました。
「ひとごろし!」
 バシャクがそうさけんだので、ソウコウは、おもわずバシャクをきりつけてしまいました。それでも、バシャクはさけびつづけるので、さらにもうひとたち、とうとうバシャクをころしてしまいました。
 
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