だい29かい ロシュンギをなかまに
 
 さて、チョウガイは、みんなにみまもられながら、いきをひきとりましたが、そのとき、こんなことをいいました。
「わたしに矢をうったやつを、つかまえた人がいたら、その人を、りょうざんぱくのあたらしいあるじにしてくれ。ではみんな、さらばだ」
 チョウガイのきもちはよくわかるのですが、これはこれで、けっこうめんどくさいことになってしまいました。
 
 みんなは、ソウコウを、あたらしいあるじにしたいと、おもっていました。ソウコウは、りょうざんぱくのみんなに、そんけいされているからです。
 
 しかし、そのソウコウはといえば、まいにち、チョウガイの死をかなしんで、ないてばかりいます。これだけたんじゅんだから、あるじにしておくと、下がらくをできるからかもしれません。
 
 それはともかく、ゴヨウは、みんなのいけんをきき、ソウコウをせっとくして、だれかがシブンキョウをたおすまでは、ソウコウがあるじということにして、りょうざんぱくをまとめました。はやいはなし、ゴヨウがしきっているわけです。
 
 あるとき、ソウコウが、こんなことをいいだしました。
「ほくけいという町に、ロシュンギという人がいる。あの人は、つよくておかねもちで、とにかくスゴイ人だから、りょうざんぱくのために、はたらいてもらいたいものだ」
 なんのつみもない人をつれてきて、さんぞくのなかまにしようという、めいわくいがいのなにものでもないはなしですが、ソウコウがいいだしたことは、ぜったいのちからをもっています。
 とにかく、ロシュンギをりょうざんぱくによぼう、ということになりました。
 
 ふつうにたのんでも、ロシュンギが、りょうざんぱくにきてくれるはずはありません。
 そこで、ゴヨウが、リキをつれて、ロシュンギのいえまで、わなをしかけにいきました。
 
 ゴヨウは、うらないしのすがたになって、ロシュンギのいえに、いきました。
 そして、
「ここのごしゅじんに、わるいうんめいがでています。東南のほうへいけば、わざわいをのぞくことが、できるでしょう」
 と、かってなでたらめをいい、かえっていきました。東南には、りょうざんぱくがあるのです。
 
 ロシュンギは、すなおな人でした。
 うらないしのいうとおり、わざわいをさけようと、リコというおとこをつれて、東南のほうへ、たびにでました。
 しかし、リコは、おかしなことにきづきました。
 にもつのなかに、「りょうざんぱくをぶっつぶせ」とかいた、はたがあったのです。
「だ、だんなさま、これはなんです?」
 ロシュンギは、こたえていいました。
「ただ東南へいくのでは、おもしろくない。わたしは、うでにおぼえがあるし、このさいだから、りょうざんぱくのさんぞくも、たいじしてしまおうとおもうのだ。はっはっは」
 ロシュンギは、おおまじめです。リコは、もう、まっさおになってしまいました。
 
 そんなとき、森の中から、こくせんぷうのリキが、あらわれました。そして、
「ロシュンギさんよ、まぁ、りょうざんぱくによってって、さけでものんでいったらどうだい」
 と、わらいました。
 ロシュンギは、だまされたことにきづいて、かんかんにおこって、リキをやっつけようと、かたなをふるいました。
 ところが、ちょっとたたかうと、リキはどこかへいなくなってしまい、つぎにはロチシン、つぎにはブショウ、リュウトウと、かわるがわる、ロシュンギのあいてがでてきては、いなくなるのです。
 こうしてロシュンギは、だんだんとふかみにはいりこんで、さいごには、にげようとしてのりこんだふねを、リシュンにひっくりかえされて、水におちたところを、チョウジュンにつかまえられて、とうとうりょうざんぱくに、つれてこられてしまいました。
 なかまにしたい人にたいして、ずいぶんあらっぽいことをするものです。

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