だい25かい ライオウとシュドウとリキとぼっちゃん
 
 さてみなさん、リュウトウがチョウガイのところにきたときに、ライオウという人がでてきたのをおぼえていますか?(だい6かいをみてください)
 このライオウが、あるひ、おしばいをみていました。
 うたをうたっている、シュウエイという女の人は、とてもびじんで、みなほれぼれとしてきいていました。しかしみなさん、「すいこでん」にでてくるびじんは、なかなかやっかいな人がおおいものです。

 うたがおわって、シュウエイはおきゃくさんのまわりをあるき、うたのおかねをいただこうとしました。まずライオウのところにきましたが、ライオウは、うっかりと、おかねをもちわすれてきていたのです。
 シュウエイが、にっこりとしていいました。
「だんなさん、すこしでいいんですよ。どうかわたしたちが、くらしにこまっているとおもって、おかねをいれてくれませんか」
 ライオウは、こまっていいました。
「すまん、きょうは、ほんとうにわすれたんだ。もっていたら、すこしだなんてケチなことは、しないんだが」
 こういうことをいってしまうと、かえってしんようをうしなうものです。シュウエイのおとうさんが、みかねていいました。
「シュウエイ、そんなしみったれは、あいてにするな」
 はじをかかされたライオウは、ブチきれました。たちあがり、シュウエイのおとうさんをこてんぱんになぐってしまったのです。みていた人たちは、やっとのことで、ライオウをなだめました。
 
 ところがこれが、だいじけんになりました。
 おとうさんをなぐられたシュウエイは、くやしくてしかたありません。うんのわるいことに、シュウエイは、このとちのちじの、なじみのげいしゃだったのです。
「ねえ、あのライオウ、あなたのぶかでしょう。あのひと、わたしのおとうさんを、あんな目にあわせたのよ。おねがいだから、こらしめて」
 こうしてシュウエイは、ちじにたのんで、ライオウをつかまえさせてしまいました。
 ライオウは、なわでしばられて、くびかせをはめられ、シュウエイのしばいごやのまえで、さらしものにされてしまいました。
 これを、ライオウのおかあさんがみつけました。むすこのあわれなすがたをみて、いそいでなわをほどき、シュウエイにもんくをいいました。
「おいあんた、ちじのちからをかりて、人をしばるなんて、そんなことがゆるされるとおもってるのかい!」
 シュウエイがこれをききつけて、もんくをいいかえしました。
「フン、うるさいばあさんだね。えらそうなことをいうんじゃないよ!」
 シュウエイは、そういって、ライオウのおかあさんをなぐってしまいました。
 ライオウは、もうがまんができなくなりました。おかあさんをたすけようと、はずしたくびかせで、いきおいよくシュウエイのあたまをなぐりつけました。
 シュウエイは、いっぱつでしにました。
 
 はんぶんくらいはじぶんのせいですが、とにかくライオウは、またつかまって、るざい(とおくへついほうされること)になってしまいました。
 このとき、ライオウをつれていくやくめになったのが、シュドウでした。いぜん、ライオウとともにチョウガイをつかまえにいき、わざとチョウガイをにがした人です。
 やさしいシュドウは、ここでも、うまくライオウをにがしてあげました。
 
 さて、ライオウをにがしたせいで、シュドウのほうも、るざいになってしまいました。
 しかし、るざいされたところのちじが、シュドウをきにいって、じぶんのこどものおもりをさせることにしました。このぼっちゃんも、シュドウがきにいって、すっかりなついてしまいました。まいにち、ぼっちゃんとあそぶ日がつづきます。
 このままですめば、なんと平和なことでしょう。
 
 あるとき、シュドウはぼっちゃんをつれて、おまつりをみにいきました。
 だれかが、シュドウのかたをたたくので、ふりむいてみると、なんとライオウではありませんか。シュドウはおどろいて、ききました。
「あんたは、おたずねものだ。こんなところにいちゃ、まずいぞ」
 ライオウがいいました。
「あれからおれは、りょうざんぱくにいったんだ。あんたには、めいわくをかけてしまった。だからおわびに、あんたをりょうざんぱくに、むかえにきたんだよ」
「いや、ちょっとまて、はなしがへんだぞ」
 シュドウは、こまってしまいました。たしかに、ざいにんにはなってしまいましたが、さんぞくになるほど、おちぶれたわけでもないのです。
 すると、ライオウのうしろから、ゴヨウがあらわれました。
「シュドウどの、じつは、チョウガイどのとソウコウどのが、ぜひあなたを、りょうざんぱくにむかえたいというのです。だから、わたしがきたのです。ふふふふふ…」
「おお、ゴヨウさん、おひさしぶりです。…なんですか、そのわらいは」
 シュドウがふときづいて、まわりをみると、ぼっちゃんのすがたがありません。どこへいったのかと、さがしはじめると、ゴヨウがいいました。
「ああ、ぼっちゃんなら、わたしのつれが、やどまでおくっていますよ。しんぱいいりません」
 シュドウが、ききかえしました。
「つれのおかたとは、どなたです?」
「こうせんぷうのリキという、ふつうのおとこですよ、あっはっはっは」
「ふつうじゃねェよ! なにわらってんですか! っていうか、わざとだろ!」
 シュドウはあわてて、ぼっちゃんをさがしました。すると、はやしのなかからリキがあらわれて、シュドウにあいさつしました。
「よお、シュドウのだんな。ぼっちゃんなら、ここでねてるぜ」
 シュドウがはやしにはいってみると、たしかにぼっちゃんは、そこでねていました。
 ひとあんしんして、だきあげてみましたが、なんと、ぼっちゃんのあたまはまっぷたつにわられ、すでにぐったりとしていました。
 
 おこったシュドウは、リキをおいかけて、どんどんすすんでいきました。するといつしか、あのサイシンのやしきに、たどりつきました。
 シュドウがサイシンにあいさつすると、おくから、ゴヨウとリキがでてきました。ゴヨウがいいました。
「あなたのようなりっぱなかたが、つまらないやくにんの下にいて、おもしろくもないでしょう。わたしたちといっしょに、さんぞくになって、たのしくくらしてみてはどうですか。チョウガイとソウコウのあにきも、あなたをおまちになっています」
 ここまでいわれて、ようやくシュドウも、ふんぎりがついたようでした。リキにたいしては、まだはらをたてていましたが、ともかく、りょうざんぱくにいくことにしました。
 
―ゴヨウのでんせつが、また一つふえました。
 
 
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