だい36かい ソウコウの死
 
 りょうざんぱくのごうけつたちは、王さまからのめいれいで、宋のくにをなやませる、遼(リョウ)のくにをやっつけました。
 また、宋のくにの中でわるさをしている、デンコやオウケイという、さんぞくたちも、おおいにうちやぶって、てがらをたてました。
 
 ほんとうなら、こんなにりっぱにたたかったソウコウたちは、王さまからほめられて、しょうぐんにだって、なってよいはずです。
 しかし、これは、あのわるいだいじんたちが、ソウコウたちをとりたてたくないので、わざと、かれらのてがらを、ないしょにしていたのでした。だいじんもだいじんですが、王さまも、ちょっとだらしないですね。ちょっとではないかもしれません。
 
 そして、ソウコウたちは、こんどはホウロウという、つよいさんぞくのたいじを、まかされました。
 ごうけつたちは、じぶんたちが、だいじんたちにりようされているのに、きがついていましたが、いつかはわかってもらえるだろうと、がまんして、たたかいにのぞみました。
 
 ホウロウのぐんは、ほんとうにつよいあいてでした。
 これまで、りょうざんぱくのごうけつたちは、一人もかけることなく、あらゆるたたかいを、くぐりぬけてきました。
 しかし、ホウロウのぐんとのたたかいがはじまると、一人、また一人と、ごうけつたちが、いのちをおとしていくのです。
 ソウコウは、なかまがしんでいくたびに、かなしんでなみだをながしました。しかしそれでも、たたかいをつづけていきました。
 
 そしてとうとう、ホウロウをやっつけて、みやこにかえることができました。
 しかしこのときには、108人いたごうけつたちのかずは、27人にまで、へっていたのです。
 
 たたかいもすべておわり、のこったごうけつたちは、それぞれ、やくにんや、しょうぐんになって、くらしました。中には、ふるさとへかえった人や、おぼうさんになった人もいました。りょうざんぱくでの、たのしかった日々をおもいだすこともありますが、いまとなっては、もうもどることはできません。
 
 わるいだいじんたちは、ここまできても、まだ、ソウコウをじゃまものにおもっていました。
 ある日、ソウコウをだまして、どくのはいったおさけを、のませてしまったのです。
 ソウコウは、それにきがつきましたが、もうたすかるみこみは、なさそうです。
 ソウコウは、かんがえました。
「わたしが死んだら、あのあばれもののリキは、きっとおこって、王さまにらんぼうをするだろう。そんなことになったら、これまでたたかって死んでいったなかまたちに、もうしわけないぞ」
 
 そしてソウコウは、リキをよんで、かれにも、どくのはいったおさけを、のませてしまいました。
 そして、
「リキよ。じつは、わたしは、もうすぐ死ぬんだ。わるいだいじんが、わたしに、どくいりのおさけを、のませたんだ。
 でも、わたしは、おまえがむちゃをしでかすのがこわいので、おまえをよんで、いま、おまえにも、どくをのませてしまった。ゆるしてくれよ」
 と、いいました。
 するとリキは、
「いいんだ。おれは、生きていても、死んでいても、あにきといっしょにいるよ。
 あにきは、おれをつれていってくれるんだね。ありがとう」
 といって、なみだをながしました。
 
 二人は、そのあとまもなく、この世をさりました。
 
 そのご、王さまが、リキにさんざんもんくをいわれて、おどかされるという、ゆめをみました。
 王さまは、ソウコウたちのはたらきをたたえて、おてらをたてて、かれらをまつったということです。
 
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 このものがたりは、ほんとうにあったはなしをもとにして、人々のあいだで、ながくあいされてきました。
 どこかまちがっている世の中と、それに立ち向かう、勇気ある男たちのすがたが、いつのじだいでも、人々のあこがれだったのでしょう。                  

おわり