一人称小説と感情移入

小説の形式の中で、「僕」「私」の視点で書かれるものを一人称小説といいます。

日本語の文章は、この一人称小説に向いている、という説を聞いたことがあります。理由は細かくて憶えていないのですが、確かに一人称で物語が進んでいくのは読みやすいな、と感じます。

私の人生初の一人称小説は、海外作品ですが『黒いカーテン』という推理小説で、一人称視点で追っていく怪奇殺人事件がメッッッチャ怖かった記憶があります。しかもその主人公が記憶喪失で、事件が起きる理由も分からなくて倍掛けで怖い。最後は、まったく意外な人物の行動で主人公が命を助けられ、その真相のシーンでメチャクチャ泣きました…

何が言いたいのかと申しますと、一人称小説はそれほど感情移入しやすい、ということです。

逆に言うと、文章が乱れて感情移入を醒ましてしまい、「しょせんこれもフィクションだしなぁ」などと思われてしまうと、その物語は負けたことになります。一人称小説は、そのリスクを回避しやすい(不自然さが少ない)ところが優れている、ということです。

反面、私小説的になりすぎ、世界観の広がりには弱いという欠点もありますので、自分の表現したいテーマに合わせて使い分けて行くのが良いのでしょうね。

歴史小説で一人称は珍しいと思いますが、伏魔伝なら、雷先の視点で一人称小説にするのが一番しっくりくるかもしれなかったですね。(やる気はないですが…)

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